廻らない時間

3月某日。
先月、年下の現場監督に派手に焼き肉を奢っていただいたので、華麗に美味しいものを奢り返したろうと。
地元ではないのでネット検索。上位の一番癖のありそうな店を探し向かう。
夜の小さなショッピングセンターはまったく人影がなく、ポツリと暖簾だけが浮かぶ。
店内の様子が全く分からない、その暖簾をくぐったのでした。

そう。そこは人生初の廻らない鮨司屋。


カウンターに腰掛け、オススメのおまかせにぎりを注文。

大事そうにネタの木箱を取り出し、包丁でスッと切り分けていく。
その手さばきに見とれているだけで時間は止まった。

1カンずつ、大将自ら醤油をかけて(ぬって)くれて目の前の皿に出してくれる。
それをヒヤァアアア( と心の中で叫びながら)口に運ぶ。

美味しいしか言えなかった。
廻っている鮨とは別の食べ物なんだと。
この大将と向き合う時間を含めて廻らない鮨司なんだろうね。
(もちろん、回転寿しも美味しいし大好き)

大トロ、ウニ、いくらなどの定番から、焼きハモや子持ち昆布などまで。
たまごも美味しかったなぁ。

わさびの分量がまた絶妙で、丁寧に美味しい。

一通り贅沢な味をたっぷりと堪能。
そしてシメサバで締め。(大将のオヤジギャグ付き)

締めてから3日目ぐらいが一番美味しいだとか、それ以降は焼いてお出しするのだとか。
シメサバ好きなんすよ〜って言葉から、シメサバのことについてお話も聞く。


自分「美味しいって言葉しか出てこないッス」
大将「本当に美味しいものを食べた時は、美味しいしか言えないんです」

大将、こっそり嬉しそうだったなぁ。本当に美味しかったのだもの。


この店はお酒飲まないで夜で1人5000円ぐらい。
これならば年に一度ぐらいこの時間を味わっても良いなぁとしみじみ思ったのです。
宇都宮でも探してみようかなぁ。